看護師の離職率は本当に高いのか?データで読み解く現実

看護師の離職率は本当に高いのか?データで読み解く現実

「看護師は離職率が高い」「新人看護師はすぐ辞めてしまう」といった話を耳にして、不安になったことはありませんか。結論からいうと、看護師の離職率は決して低いとはいえませんが、「看護師なら必ず辞めやすい」と断定できる数字でもありません。大切なのは、誰が・どの地域で・どのような職場を辞めているのかまで、データを分けて見ることです。

先に結論:看護師の離職率は「約11%」、一律に高いとは言い切れない

看護師を含む正規雇用看護職員の離職率は11.0%です。一方で、新卒・既卒、病院の規模、地域によって差があるため、平均値だけで看護師という仕事全体を判断しないことが重要です。

日本看護協会の「2025年病院看護実態調査」によると、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%でした。前年度の11.3%から0.3ポイント下がっており、近年の数字だけを見る限り、離職率が急上昇している状況ではありません。

この11.0%という数字を、わかりやすく言い換えると、100人の正規雇用看護職員がいる場合、1年間でおよそ11人が退職するイメージです。ただし、この「退職」には、ほかの病院やクリニックへの転職だけでなく、結婚・出産・育児、介護、転居、進学、定年退職なども含まれます。

つまり、離職率は「看護師を辞めた人の割合」ではありません。現在の職場を離れた割合であり、看護師資格を生かして別の場所で働き続ける人も含まれているのです。

また、日本看護協会のこの調査で対象となる「看護職員」には、看護師だけでなく、保健師・助産師・准看護師も含まれます。正確にデータを読むためには、「看護師のみの数字」と受け取らないことも大切です。

新卒看護師の離職率は8.4%:約9割は1年目を継続している

新卒採用者の離職率は8.4%で、単純計算では10人中9人以上が1年目を継続しています。「新人看護師の大半が辞める」というイメージとは、実際のデータに差があります。

2024年度に採用された新卒看護職員の離職率は8.4%で、前年度より0.4ポイント低下しました。そのため、「看護師になったら、ほとんどの人が1年目で辞める」という見方は正確ではありません。

ただし、8.4%という数字を「心配しなくてよい」と軽く受け止めることもできません。新人看護師にとって最初の1年は、学校で学んだ知識を実践につなげ、患者さんの命や生活に向き合う大きな変化の時期です。慣れない夜勤、責任の重さ、優先順位をつけて動く難しさなど、負担を感じやすい場面が少なくありません。

さらに、学校種別で見ると、新卒看護師の年度内離職率には違いがあります。

学校養成所の種別新卒看護師の年度内離職率
大学(看護系大学・大学校)7.5%
短期大学(3年課程)8.1%
看護師学校養成所(3年課程)8.7%
看護師学校養成所・短期大学(2年課程)12.3%
その他(5年一貫教育・高等学校専攻科など)9.2%

調査結果には差がありますが、数字だけで「どの進学先が正解か」を決めることはできません。離職には、本人の年齢、生活環境、就職先の教育体制、配属部署、働き方など、多くの要素が関わるためです。

看護師を目指す段階では、「卒業しやすいか」だけでなく、国家試験対策、実習サポート、就職相談、卒業後を見据えた学びが得られるかを確認しておくとよいでしょう。

「看護師は離職率が高い」と感じられやすい3つの理由

看護師の離職が目立つ背景には、医療現場の忙しさだけでなく、資格職ならではの転職のしやすさや、地域・職場ごとの人材移動があります。離職率は、仕事への不満だけを表す数字ではありません。

1.資格を生かして職場を変えやすい

看護師は国家資格を持つ専門職です。病院だけでも、急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病棟、外来、手術室、救急外来など、働く場所によって役割が大きく異なります。

さらに、診療所、訪問看護ステーション、介護施設、健診センター、企業、学校、行政機関など、活躍できる場は幅広くあります。そのため、退職は「看護師に向いていないから辞める」という意味ではなく、自分の生活やキャリアに合う働き方へ移る選択である場合もあります。

たとえば、病棟で夜勤を経験した後に、日勤中心の外来や訪問看護へ転職する人もいます。患者さんと長く関わりたい人、救急性の高い現場で力をつけたい人など、看護師のキャリアは一つではありません。

2.夜勤・交代制勤務の負担が見えやすい

看護師の仕事は、24時間365日、患者さんの療養を支える必要があります。とくに病院勤務では、夜勤や交代制勤務があることが少なくありません。

日本看護協会の2025年調査では、一般病棟に勤務する看護職員のうち、ひと月の夜勤時間が72時間を超えた人の割合は33.9%でした。勤務時間だけで仕事の大変さを判断することはできませんが、生活リズムへの影響や体調管理の難しさを感じる人がいるのは自然なことです。

一方で、働き方を見直す病院も増えています。看護職員を確保するために「日勤のみ」を導入している病院は54.7%、「夜勤回数・夜勤時間・曜日を選べる」仕組みを設けている病院は44.1%でした。就職先を選ぶ際は、「夜勤があるか」だけでなく、夜勤回数、勤務間隔、希望の相談方法、育児・介護との両立支援まで確認することがポイントです。

3.都市部では転職先の選択肢が多い

離職率は、地域によっても変わります。2024年度の正規雇用看護職員の離職率は、全国平均11.0%に対し、神奈川県では13.3%でした。

首都圏のように医療機関が多い地域では、働く場所の選択肢が多く、より自分に合う条件や分野を求めて転職する人もいます。そのため、離職率が高い地域のすべての職場が「働きにくい」とは限りません。

反対に、離職率が低いからといって、必ず働きやすいとも断定できません。地域の求人状況や人口構成、病院数、通勤事情なども数字に影響します。離職率は、職場選びの参考情報の一つとして見るのが適切です。

既卒看護師の離職率が高いのはなぜ?

既卒採用者の離職率は16.1%で、新卒採用者の8.4%より高い数字です。これは既卒者が不安定という意味ではなく、転職して自分に合う職場を探す途中の人も含まれるためです。

「既卒採用者」とは、看護師として働いた経験がある人や、いったん離職した後に再就職した人などを指します。2024年度の既卒採用者の離職率は16.1%で、前年度と同じ水準でした。

新卒者と比べて既卒者の数字が高くなる背景には、次のような事情が考えられます。

  • 前の職場での経験をもとに、給与、夜勤、通勤、診療科、教育体制などを見直している
  • 結婚、出産、子育て、家族の介護、転居などに合わせて働き方を変えている
  • 病棟勤務から外来、クリニック、訪問看護、介護施設などへキャリアを移している
  • 入職後に、求人票や面接だけでは分からなかった職場との相性を見極めている

看護師は経験を積むほど、「どのような看護をしたいか」「どの働き方なら続けられるか」を具体的に考えやすくなります。既卒者の離職率には、こうしたキャリアの再選択が反映されている面もあります。

もちろん、短期間での転職を繰り返すことには慎重になる必要があります。しかし、自分の健康や生活を守るために職場を変えることは、必ずしも後ろ向きな選択ではありません。

新人看護師が離職を考える主な理由

新卒看護師の離職には、精神的な不調、適性への不安、実践能力への不安が深く関わっています。「根性が足りない」のではなく、支援を受けながら成長できる環境づくりが重要です。

年度内に離職した新卒看護師がいた病院を対象に、看護管理者が考える主な退職理由を尋ねた調査では、上位に次の項目が挙がりました。

主な退職理由として選ばれた項目割合
健康上の理由(精神的疾患)54.6%
看護職員としての適性への不安46.6%
看護実践能力への不安44.2%
上司・同僚との人間関係27.0%
他施設への関心・転職23.0%

ここで注意したいのは、これは退職した本人に直接聞いた調査ではなく、病院の看護管理者が「主な理由」と考えた回答である点です。それでも、心身の健康、看護師としての自信、人間関係が大きな課題として見られていることは読み取れます。

新人看護師は、学校で学んだ看護を実際の患者さんに提供するなかで、「自分の判断で大丈夫だろうか」「もっと早く動かなければ」と不安を抱えることがあります。技術や知識の習得に加え、チームで働くコミュニケーション、緊急時の対応、記録業務など、覚えることが多い時期です。

だからこそ、就職先を選ぶときには、プリセプター制度や新人研修の有無だけを見るのではなく、次のような点も確認しましょう。

  • 新人が相談できる先輩や教育担当者がいるか
  • 研修が勤務時間内に行われているか
  • 配属後のフォロー面談があるか
  • 急性期・慢性期・回復期など、病院や病棟の特徴が自分に合っているか
  • 残業、夜勤、休暇、通勤時間を含めて無理なく続けられそうか

離職率が低い職場を探すより、「続けやすい職場」を見極めよう

離職率だけで良い職場・悪い職場を決めることはできません。自分が大切にしたい働き方と、職場の教育・人員・勤務体制が合っているかを確かめることが、長く働くための近道です。

たとえば、救急医療に関心があり、忙しい環境でも多くの経験を積みたい人にとっては、急性期病院が成長につながることがあります。一方で、患者さんの生活をじっくり支えたい人や、生活リズムを整えたい人にとっては、回復期、慢性期、外来、訪問看護などが合うかもしれません。

職場見学や説明会では、次の質問を準備しておくと、求人票だけでは見えにくい実態を把握しやすくなります。

  • 新卒看護師は、どのような研修を受けますか
  • 夜勤はいつ頃から始まり、月に何回程度ですか
  • 希望部署やキャリア相談はどのように行われますか
  • 有給休暇は取得しやすい雰囲気ですか
  • 看護師の平均勤続年数や、年代別の職員構成を教えてください
  • 子育て、介護、体調面などで働き方を相談できる制度はありますか

質問をすることは、失礼なことではありません。むしろ、自分が安心して働き続けるために必要な情報を集める大切な準備です。

看護師を目指す人へ:不安があるのは真剣に進路を考えている証拠

看護師の離職率を知ることは、夢をあきらめるためではなく、自分に合う学び方・働き方を選ぶために役立ちます。看護師には厳しさもありますが、多様なキャリアを築ける専門職でもあります。

看護師は、人の健康や生活を支える責任のある仕事です。夜勤や交代制勤務、忙しい場面、学び続ける必要性など、簡単なことばかりではありません。

しかし、その分だけ、患者さんや家族から直接「ありがとう」と言ってもらえる場面があり、専門知識と技術を生かして人の人生に関われる仕事でもあります。経験を重ねれば、認定看護師や専門看護師を目指す道、特定の診療科を深める道、訪問看護や地域医療に関わる道、看護教育に携わる道など、選択肢は広がっていきます。

「自分に看護師が務まるだろうか」と不安になるのは、決して珍しいことではありません。まずは看護師という仕事の現実を知り、自分が大切にしたい価値観を整理しながら、納得できる進学先と将来の働き方を考えていきましょう。

よくある質問

看護師の離職率は、数字の背景を知ることで、必要以上に不安にならずに進路を考えやすくなります。ここでは、看護師を目指す方や保護者の方からよくある疑問に答えます。

看護師の離職率は高いですか?

正規雇用看護職員の離職率は、2024年度で11.0%です。低い数字とはいえませんが、看護師だけが極端に辞めやすいと断定できるものでもありません。退職には、転職、結婚、出産・育児、介護、転居、定年なども含まれます。

新卒看護師はどのくらい辞めますか?

2024年度の新卒採用看護職員の離職率は8.4%です。裏を返せば、約9割の新卒看護職員は年度末まで勤務を継続しています。

既卒看護師の離職率が高いのは、看護師を続けられない人が多いからですか?

必ずしもそうではありません。既卒採用者には、より自分に合う勤務形態や診療分野を求めて転職する人、生活環境の変化に合わせて働き方を変える人なども含まれます。既卒採用者の離職率は16.1%ですが、看護師資格を生かして別の職場で働き続けるケースもあります。

看護師の離職率と転職率は同じですか?

同じではありません。離職率は、ある職場を退職した人の割合です。一方、転職率は、別の職場へ移った人の割合を指します。たとえば、結婚や転居を機に退職して少し休む人もいれば、退職後すぐに別の病院・施設へ転職する人もいるため、離職率だけでは転職の実態をすべて把握できません。

看護師を辞めたら、資格を生かした仕事には戻れませんか?

看護師資格は、病院勤務だけに限られません。臨床経験を積んだ後に、外来、クリニック、訪問看護、介護施設、健診センター、企業、学校、行政など、異なる領域で働く道があります。いったん仕事から離れた場合でも、復職支援や研修を活用しながら看護の仕事に戻る選択肢を考えられます。

夜勤が苦手でも看護師になれますか?

なれます。病院の病棟では夜勤を伴う働き方が一般的ですが、経験を積んだ後には、日勤中心の外来、クリニック、健診、訪問看護、介護施設などを選ぶ人もいます。ただし、就職直後から希望どおりの働き方ができるとは限らないため、募集条件やキャリア形成の考え方を事前に確認することが大切です。

看護師に向いている人は、どのような人ですか?

人の話を丁寧に聞ける人、相手の変化に気づこうとする人、分からないことを学び続けられる人は、看護師の仕事で強みを生かしやすいでしょう。体力やコミュニケーション力も大切ですが、最初からすべてを完璧にできる必要はありません。学生時代から知識や技術を積み重ね、現場で経験を重ねながら成長していく仕事です。

看護師に向いていないか不安です。進学しても大丈夫でしょうか?

不安があること自体は、看護師に向いていない証拠ではありません。むしろ、仕事の責任や患者さんへの関わりを真剣に考えているからこそ、不安を感じることもあります。看護学校や予備校の説明会、オープンキャンパス、看護体験などを利用し、学び方や現場の雰囲気を知ったうえで進路を考えるとよいでしょう。

看護学校の種類によって、就職後の離職率は変わりますか?

調査では学校種別による離職率の違いは見られますが、その数字だけで「この学校種別なら辞めにくい」と判断することはできません。卒業後の離職には、本人の年齢、生活状況、就職先の教育体制、勤務環境、配属先など、複数の要因が関わります。

新人看護師が就職先を選ぶとき、何を確認すべきですか?

新人研修の内容、プリセプターや教育担当者による支援、夜勤開始の時期、残業の状況、休暇の取りやすさ、相談窓口の有無を確認しましょう。加えて、病院の機能や病棟の特徴が、自分の関心に合っているかも重要です。たとえば、スピード感のある急性期医療に魅力を感じるのか、患者さんとじっくり関わる回復期・慢性期医療に関心があるのかを考えると、職場選びの軸が見えてきます。

職場見学では、どのような点を見るとよいですか?

施設の新しさや立地だけでなく、看護師同士が声をかけ合っているか、新人が質問しやすそうな雰囲気か、患者さんへの接し方が丁寧かを見てみましょう。見学時に質問できる場合は、新人教育、夜勤、配属希望、休暇、キャリア支援について尋ねると、働く姿を具体的に想像しやすくなります。

神奈川県の看護師の離職率は高いですか?

神奈川県の正規雇用看護職員の離職率は13.3%で、全国平均の11.0%を上回っています。ただし、首都圏は医療機関が多く転職先の選択肢も多いため、離職率だけで職場環境を判断することはできません。

看護師として長く働くには何が大切ですか?

自分に合う職場を選ぶことに加え、困ったときに相談すること、心身の不調を抱え込まないこと、キャリアや生活の変化に応じて働き方を見直すことが大切です。最初の就職先がすべてではなく、経験を生かして働く場所を選び直すこともできます。

出典

日本看護協会「2025年病院看護実態調査 報告書」(2026年3月公表)

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